歯周病の初期治療
米国式短期集中初期歯周病治療について
米国式短期集中初期歯周病治療とは、一回の来院で口腔内の細菌を全て除去する治療です。
従来、国内で長年行われ続けた細菌物質除去治療が2,3ヵ月かかり、歯周病菌がその期間に再感染してくるのに比べ、この欧米を中心とした最新治療の基本的な考え方は、治療を行なった部位に対して再感染を起こす可能性のある歯周病菌を短期・集中的に撲滅、もしくは減少させることです。
歯周病精密検査(6点法)を行なった後、歯冠、そして歯根面から歯石、歯周病菌、歯周病菌によって生じた内毒素(エンドトキシン)を除去し、表面を滑沢にすることで、歯周病再発を防止します。
通常この処置は歯科衛生士が行いますが、米国式歯周病治療では歯周病専門医師が拡大鏡や顕微鏡を使って、肉眼では確認しにくい歯周ポケット内の細菌物質を徹底的に除去します。
治療後は、治療の効果を最大限にするため、歯周病菌に効果があると世界的に認められている抗菌薬(日本ではいまだ未承認)や副作用が無く殺菌できる光殺菌療法を行い、歯周病菌の撲滅を目指します。
同時に、口腔内の良好な衛生状態を維持がとても重要になります。週に1度来院していただき、正しいブラッシング法を伝授し、歯周病菌の繁殖を予防できるブラッシングテクニックを習得していただきます。
さらに1回目の治療から1ヶ月後に歯周病の状態についての評価を行い、①改善した状態をそのまま維持するコースと、②元々重症な部分がある方には、次に続く歯周病再生手術の成功率を上げる初期治療コースとして米国式歯周治療は終了となります。
主な歯周病の検査は、X線検査と歯周ポケット検査があげられます。
X線検査
X線検査はデジタルX線撮影により、かなり骨の状態が把握できるようになりましたが、立体的な奥行きがわかりづらい場合もあります。
歯周再生手術が必要な場合はCT撮影を行いますが、まずは最初の診断段階では、歯周ポケット検査である程度の歯肉と骨の破壊を調べることができます。
歯周ポケット検査
歯周ポケット検査に関しては、国内の健康保険で認められている治療では、はじめに歯周組織基本検査という歯牙周囲の1ヵ所を計測する方法で検査を行います。
歯牙は円柱状であり、歯周病の状態は1本の同じ歯でも部位によって進行度に違いがあります。そのため、1ヵ所だけの検査では間違いなく不十分であり、病気の部分を見逃してしまう可能性があります。
このような不十分な歯周病の検査が行われているのは、先進諸国内では日本だけです。欧米先進国では最低でも6ヵ所を検査することで、1本の歯牙の全体像を把握します。
残念ながら日本の歯科医療の健康保険診療が先進諸国では主流で当然とされる診療より遥かに不十分で遅れた内容のため、たとえ歯周病専門医であっても、正確な検査を行い、歯周疾患の状態を把握し、さらには適した治療を行うことが難しくなります。
当院の米国式歯周病治療においては、最低6ヵ所の歯周ポケット検査と重症な場合はCT撮影を併用して、より正確な診断を行っております。
治療期間、来院回数
一般的な歯周治療の場合、スケーリング(歯肉より上の細菌物質除去)を行い、1ヶ月以上待った上で再検査とSRP(歯肉より下の細菌物質除去)を6回(上下左右奥歯と上下前歯)に分けて行います。
そして、6回目の治療からさらに1ヶ月後に再検査を行い、治療効果の評価を行います。
そのため、治療終了まで4ヶ月ほど治療に時間がかかってしまう上に、治療中は口腔内に綺麗な部位とまだ細菌の付着している部位が混在することにより残存細菌による再感染や再増殖が起こり、まさに「除去してもまた出てくるいたちごっこ」状態を繰り返し、1年に1度これを繰り返しても徐々に進行していくのが現状です。
米国式短期集中初期歯周病治療では、メインの処置は1回、全体の治療期間としては1ヶ月で短期集中的に行うことにより、歯周病菌の再感染再増殖を抑制し、治療効果が継続するのがメリットです。
抗菌薬
抗菌薬は2種類を併用して服用して頂きます。この方法は、歯周病治療の先進国である欧米諸国では一般的な方法であり、化学療法として効果があると考えられる唯一の方法です。
なぜなら、歯周病の原因となる細菌は、1種類ではありません。悪性度の高い歯周病菌全てに効果のある薬剤がないため、2種類を併用することで悪性の高い菌を殺菌します。
しかし、このうち1種類の抗菌薬(メトロニダゾール)に関しては、日本において歯科での適用はないため、健康保険の治療では使用することができません(国内でも他科の疾患には使用されているお薬です)。
気をつけなければいけないことは、抗菌薬だけでは歯周病は治癒しないという点です。必ず口腔内から細菌物質を機械的に除去する必要があります。
歯石などの大きな細菌物質や感染した歯質に対しては、抗菌薬だけでは歯がたちません。抗菌薬は、徹底的に細菌物質を機械的除去した後に、口腔内に浮遊残存する歯周病菌の残党を駆除する役割を担います。
ですので、歯を磨かずに抗菌薬を服用して歯周病予防をするといった夢のような効果があるわけではないのです。
光殺菌(療法)
感染部分に光感受性物質を注入し、光を照射することで殺菌する治療法です。医科では約30年前から光やレーザーを用いて特定部位の早期がんを治療する方法があります。
歯科では、数年前から欧米を中心に体に優しい治療法として普及してきました。
光感受性ジェルを細菌に浸透させて光で殺菌する治療法で、歯周病治療や感染インプラントの滅菌に有効とされています。
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痛みが無く安心
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あらゆる細菌に効果を示す
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抗菌薬を使わないので、耐性菌が生じない
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副作用が無く、繰り返して治療に利用できる