金属アレルギー
歯科金属アレルギー(有害物質のデトックス療法)
現代社会においてアレルギー性の疾患は年々増加をたどる一方です。日常では、食環境の変化(食品添加物 農薬など)や環境悪化(環境汚染 ストレスなど)などさまざまな要因から私たちが知らないうちに体内に毒素が蓄積され、人体に悪い影響を及ぼしています。
隠れた原因として、歯科用金属もその一因となっていることが分かってきました。 『金属アレルギー』はその一例です。
金属アレルギーとは?
金属そのものは身体に対して無害なものなのですが、汗や唾液などの体液によってイオン化され溶出した金属が体内に取り込まれ、体内のタンパク質と結合し、この物質を異常なものと認識した生体がアレルギー性をもつようになり、再び同じ金属が体内に入ってタンパク質と結合すると皮膚や粘膜の破壊を起こし始めます。
このような状態を『金属アレルギー』といいます。 発症しない場合でも長い期間にわたる金属の体内蓄積によってリスクが増大します。
これは、すぐに症状がでるタイプのアレルギーではありませんので、原因が金属とは思わず悩む方も多いようです。ピアスやネックレスなどによる皮膚症状は早期に発症しますので原因に気がつくきっかけになります。
このような場合には、装飾品だけでなく歯の詰め物や食品、飲料水など生活環境全般を見直すことが必要です。
歯科用金属と金属アレルギー
歯科治療では合金を用いる事が非常に多いです。
治療のために使用した金属充填物は、治療後数年経過すると唾液によって、貴金属(金・白金など)の含有量が少ない充填物ほどイオン化し溶け出しやすくなってしまいます。
また歯のかみ合わせによる刺激や異種金属の接触にて、帯電(ガルバニー電流)と呼ばれる微弱電流を生じて、イオン化傾向が強まりアレルギー症状が出やすくなります。
その結果以下の表のような症状を引き起こします。
- 手足のかぶれ
- 関節炎・関節痛
- 腎炎
- 過敏性肺炎
- 汎発性湿疹
- 掌蹠膿疱症
- うつ症
- 肌のシミ・しわ 肌荒れ
- 頭痛
- 喘息
- 偽アトピー性皮膚炎
- 扁平苔癬
- 水銀皮膚炎
最近では、口の中の安定していない金属によって免疫力が低下し、老化や発癌が促進されてしまうともいわれています。
有害重金属について
私たちを取り囲む毒素の中で近年非常に問題視されているのが、上記の水銀をはじめ、鉛、カドミウム、アルミニウム、ヒ素などの有害重金属です。中でも、最も神経毒性が強いといわれているのが「水銀」です。
かつて虫歯治療の詰め物(充填物)などにごく一般的に使用されていた「アマルガム」という物質は、成分の50%が水銀(有害重金属)でできているそれ自体が人体にとって有害な物質です。
アマルガムから溶け出た水銀による全身への毒性が、頭痛、疲れやすい、不眠、しびれ感、うつ状態、情緒不安定、皮膚炎、慢性疲労、免疫力低下などの原因になることがわかって近年非常に問題視されています。
実は諸外国と比較して、日本人の体内には水銀の蓄積量が多い傾向にあります。水銀はマグロ、カツオ、サケなど比較的、大型魚に多く含まれるために(食物連鎖による凝縮、濃縮の結果)、海産物、寿司を多食する日本人では小児でさえ水銀毛髪濃度がアメリカ人平均値の約3倍はあることがシカゴの小児科医から報告されています。
ヒ素も大量にひじきなどの海産物を食べ続けた場合には体内に蓄積される可能性がイギリスから報告されています。
地域によっては、米に高濃度のカドミウムが検出されたり、飲料水の中に鉛、アルミニウムが多量に含まれている場合があることも明らかになっています。
そして何よりも実際、有害重金属が検出されない方は残念ながらほとんどいないといわれています。水銀、ヒ素、アルミはほとんどの方から検出されます。続いてカドミウム、スズ、ニッケルなどが比較的多いようです。
また、母体から胎児へ有害重金属が移行することもわかっています。さらにこれらの有害重金属は、活性酸素から体を守る機能や体に必須のミネラルや栄養素の吸収をさまたげたりすることも研究で発表されています。
以下に有害重金属の種類と摂取元、身体に与える影響について表に示します
有害重金属 | 摂取元 | 身体に与える影響 |
---|---|---|
水銀 | マグロなどの魚介類、農薬、化粧品、アマルガム(歯科充填金属)など | 頭痛、疲れやすい、不眠、しびれ感、うつ状態、情緒不安定、皮膚炎、慢性疲労、免疫力低下、高血圧など |
鉛 | ガソリン、ヘアカラー、陶器、絵の具、古い水道管、ペンキ、電池飲料水など | 貧血、情緒不安定、神経疾患、 子供の成長阻害など |
ヒ素 | 大量のひじき、殺虫剤、除草剤、汚染された水など | 疲労、手足の灼熱感、アレルギー症状、皮膚炎、胃腸障害など |
カドミウム | 煙草、排気ガス、メッキ工場、合成ゴム、プラスチック、米など | 脱毛、貧血、たんぱく尿、血圧上昇、神経過敏など |
アルミニウム | アルミ鍋、アルミ缶、アルミホイル、歯磨き粉、胃腸薬、飲料水、ベーキングパウダーなど | 食欲不振、息切れ、胃腸障害、脳・神経疾患、筋肉痛など |
ニッケル | 煙草、マーガリン、メッキされた金属、電池など | 皮膚炎、酵素阻害など |
各種検査
上記のような金属アレルギーや有害重金属による症状が疑われる場合は、まず体内にどのような金属があるのか、またどの金属に反応しているかをつき止める必要があります。
パッチテスト(貼付試験)
内科や皮膚科で保険適応となる検査です。 アレルギーの疑いのある材料を肌に付け、2日間そのままにして、肌の反応を見る検査です。検査中は激しい運動や入浴が出来ないなど制限が多くあります。
歯科治療からのデトックス対策 メタルフリーへ
有害重金属がいかに体に悪影響を及ぼしているかご理解いただけたものと思います。
よって、患者さんの体質や状態に合わせた慎重な素材選択が必要になります。
しかしながら現実問題として、歯科用合金を全く使用しない歯科治療は困難です。
金属を用いる必要がある場合は、金やプラチナなどの安定した金属である貴金属を用いた修復がよいでしょう。
チタンも金属ですが、かなり安全性の高い材料です。失われた歯を回復する場合には、チタン製インプラント(人工歯根)とセラミックの人工歯冠が安全な選択といえます。
しかし、可及的に金属を用いないメタルフリーの治療がより安全であることは言うまでもありません。 セラミックは生体親和性が高く、劣化しない上に審美性にも優れています。
一般的に、部分入れ歯やブリッジは強度を考慮すると金属を使用せざるを得ないのですが、最近では、ジルコニアで強度を高めたセラミックブリッジや金属製はり金を使用しない特殊軟性樹脂製アームを用いたノンメタル義歯が開発されています。
なお、プラスチック樹脂のみを充填物に用いる治療もありますが、変色しやすく微小亀裂が起こりやすいため二次的な虫歯を誘発しやすいので適応が限られており、セラミックに比べると長期使用には耐えません。
金属アレルギーや有害物質関連症状は、知らぬ間に発症し徐々に進行し、突然激しい症状が起こることがあります。
最も重要なことは、有害物質の排除・排泄と取り込み・蓄積防止をできるだけ早期に行うことです。