ドライマウス(口腔乾燥症)
ドライマウスとは?
最近『ドライマウス』という言葉をよく耳にしませんか?
ドライマウス(口腔乾燥症)とは口腔粘膜が乾燥する症状のことです。
実際には、主に唾液の分泌量の低下や粘性(べたべた感)の亢進なども関連しており、以下の図のように実に様々な症状が現れます。
ドライマウスの症状
- 口渇感
- 不快感
- 舌・粘膜の痛み
- 義歯の不適合
- 虫歯・歯周病の増加
- 味覚異常
- 口臭
- 摂食嚥下機能の低下
唾液(だえき)について
唾液は、唾液腺と呼ばれる唾液を分泌する腺から口腔内に分泌される液体です。
左右両側に一対ずつ存在する3種類の大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)から全唾液の90%が作られています。
その他多数の小唾液腺が唇や頬、上あごや舌の粘膜に散在しており、その付近に分泌しているのです。
通常、健康な人で1日1~1.5リットル程度(安静時唾液で700~800ミリリットル程度)分泌されます。
血液をもとに作られており、成分の99.5%が水分で、無機質と有機質が残りの約半分ずつを占めています。この無機質と有機質が唾液特有の生理機能を発揮するのです。
その唾液の働きについて以下のように様々な働きを担っています。
消化作用
・アミラーゼ:デンプンを分解
・リパーゼ:脂質を分解
・ベルオキシターゼ:活性酸素を消化する酵素・癌予防でも注目
・プロチアリン:糖を分解
円滑作用
・ムチン:粘性があり食べ物の嚥下を円滑にする
・会話や発音をスムーズにする
味覚発現作用
・ムチン:味物質を味蕾の先端部へ運ぶ
洗浄作用
・唾液中タンパク質(アルプミン)の獲得皮膜で歯や粘膜の保護を行う
保護作用
・物理的に洗浄
緩衝作用
・炭酸水素イオンによるPHを一定に保ち、細菌の増殖を抑える
抗脱灰作用
・細菌の産生する酸を中和し歯の脱灰を阻止。虫歯予防
抗菌・殺菌作用
・リゾチーム:酵素
・ラクトフェリン:糖たんぱく
・ベルオキシターゼ
粘膜修復作用
・神経や上皮成長因子を含み、傷の治癒効果を高める
老化防止作用
・バロチン:老化防止のホルモン
これほどの多くの重要な役割を果たしている唾液の分泌量が低下するということは、これらの生理作用が阻害されることになり、さまざまな疾患や老化を引き起こす原因にもなるということです。
唾液の分泌低下が主な病態であるドライマウスが、如何に深刻であるか想像に容易いでしょう。
現在、このドライマウスにかかっている患者さんは、日本国内に800万人から3000万人と推定されています。
残念ながら最近では増加傾向にあり、現代病として非常に注目されている症状です。
ドライマウスの原因
ドライマウスの原因の主なものは以下に挙げられます。
顎関節症の発症に関わる生活習慣(該当する数が多い方ほど要注意です)
- シェーグレン症候群、それ以外の自己免疫疾患の二次的症状
- 糖尿病など全身疾患の二次的症状
- 薬物療法の副作用
- 放射線療法の副作用
- 精神的ストレス/うつ症状
- 不規則な食生活/不十分な咀嚼回数/ビタミン・ミネラルの不足
- 嗜好品の過剰摂取
- 口呼吸
- 歯磨剤の過剰使用
- 加齢
ドライマウスはこのように多くの原因によって発症し、また複合的に重複している場合が多いばかりでなく、このドライマウスの発症が二次的な病態を引き起こす誘因にもなりうるのです。
そして、ドライマウスの原因が何であるかを解明し、その原因に適した治療法を行う必要があるのです。
当院のドライマウス外来
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ドライマウス検査の流れ
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︎1 専用の問診票に記載していただきます
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2 問診 口腔内の診察(レントゲン撮影)
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3 姿勢チェック
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4 口腔内および全身の写真撮影
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5 安静時唾液量測定検査
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6 刺激時唾液量測定検査
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7 口腔水分計による保湿度検査
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8 湿潤度検査紙による唾液の貯留量の検査
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9 カンジダ菌検査
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10 口臭検査
このようにドライマウスの診断に必要な10種類の検査を行い、その検査結果をもとに現在の病状と原因または原因となっている疾患を解明し、治療に当たらせていただきます。
ドライマウスの治療法
治療法には原因療法と対症療法という大きく二つの方法があります。
生活指導、筋機能訓練、専門的なドクターズサプリメントの活用、点滴療法などさまざまな治療法があります。
またドライマウスによって悪化する虫歯や歯周病のコントロールをおこなうことが、ドライマウスのさらなる悪化予防には欠かせません(以下の表を参照)。
歯科的治療 |
・虫歯の治療 |
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原因療法 |
・生活指導 |
対症療法 |
・湿潤剤の使用 |
医科との連携 |
・薬剤の変更や軽減の依頼 |