マイクロスコープ精密治療

顕微鏡歯科治療

当院で使用しているカールツァイス社製OPMI pico with MORA interface

顕微鏡治療は歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を使用して治療部位を拡大視しながらおこなう治療方法です。

顕微鏡はすでに脳外科・眼科などの非常に細かい治療分野では欠かせない治療器具ですが、実は歯科においてもそれに匹敵するほど非常に微細な部分を繊細な技術で行わなければなりません。

ほとんどすべての歯科治療において肉眼でおこなう従来の歯科治療よりも顕微鏡治療の方がはるかに精度の高い治療が可能になります。 そこまで精度を高める必要があるのかと思われるかもしれませんが、歯に関わる病気の大きさはとても小さいので、ほんのわずかな不正確さが歯の寿命や治療の成功を左右するのです

高倍率で歯を見ながらの治療が可能になることによって削り過ぎずに、悪い所だけを最少の削る量で治療できます。削った部分に詰め物を入れる場合も、肉眼治療では封鎖しきれなかったりすき間に気付かなかったりすると、そのすき間から再びむし歯になることは珍しくありません。顕微鏡で拡大視していると詰め物もすき間無く封鎖できるようになります。

近年は歯にとって最小限の侵襲で治療して、できるだけ削らずに歯を残す治療が主流になってきています(MI治療)。およそ20倍拡大することができる歯科用マイクロスコープをつかった顕微鏡歯科治療も、そんな時代を象徴する歯科治療なのです。

しかし、歯科用マイクロスコープは高価な機械であり、しかも操作技術に多くの時間を要するため、日本の歯科医院においてあまり普及しておらず、使いこなせる歯科医師も少数であるのが現状です。

マイクロエンド治療 −欧米式歯内療法−

歯内療法(エンドドンティックス)とは、むし歯菌によって侵された歯根内の管(根管といいます)の治療のことを言います。

神経部分(歯髄)が炎症を起こし細菌感染している場合は、歯髄を除去します(抜髄)。

歯髄が壊死して腐敗しているばあいは、根管内の腐敗歯髄・歯質を除去します(感染根管治療)。



抜髄
感染根管治療


歯内療法は歯の中の奥深い部分でしかも数ミクロン単位の細かい作業のため、手探りで勘に頼っていた旧来の方法では、不完全・不確実で歯科医師の中でも最も困難とされている治療のひとつとされてきました

実際、治療が困難であるがために、歯根の中で取り切れなかった細菌によって膿がたまったり歯が割れて抜歯することになってしまうケースが多くあります(歯周病と並んで抜歯原因の大半を占めます)。

欧米では20世紀末から、この歯内療法をできるだけ完全・確実性を高めるべく歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を使って取り組まれてきました。

欧米の歯内療法専門医の治療は、マイクロスコープで根管内を確認しながら以下のように行います(マイクロエンド治療)。


① 根管内の感染した歯髄・歯質をNi-Ti(ニッケルチタン)ファイルという非常に柔軟性の高い形状記憶合金のやすり状器具を使用して、歯科用顕微鏡で歯内を見ながら、慎重に削り過ぎたりすることなく、肉眼では除去できなかった部分を適切に清掃します。このファイルを使用することによって、国内で主に使われているステンレス製のファイルでは除去できなかった極度の曲がった根管内の歯髄を除去することが飛躍的に向上しました。




② 器具で除去できないミクロン単位の細かい部分は、無機質・有機質の溶解作用の強いEDTAや次亜塩素酸ナトリウムで超音波を使用して循環させながら洗い流します。




③ きれいになった根管の中に、再度細菌が繁殖しないようにすき間(死腔)を残さないようガッターパーチャーというゴム製の詰め物を軟化して注入します。圧力をかけて注入することによって、今までは入れることができなかった数ミクロンの側枝まで入りますので、再発率が低くなりました。




歯内療法は歯を残す根本となる最も重要な治療であるので、このようなマイクロスコープを使った最新歯内療法は米国では常套化され、現在の先進諸国では標準になっています。

しかし、残念ながら米国の治療費の数十分の一の日本の保険治療では、上記の高価な器材が使えないためにほとんど行われておらず日本は歯内療法において数十年間後進国と言わざるを得ません。

当院では、患者様のご希望と病状に合わせて、最新の歯内療法を受けていただくことが可能です。



顕微鏡外科(マイクロサージェリー)

口腔外科・歯周外科・インプラント外科等の手術をマイクロスコープを使って行います。 メリットは、以下の通りです。

  • 歯周外科歯根端切除手術などの「歯を残すための手術」の際に、再発の原因になる細菌感染部分を見落とさず除去しやすくなります。

    また肉眼では困難な根の先端に小さな詰め物を入れる手術(逆根管充填処置)がより正確に行える上に、この詰め物自体もMTAと呼ばれる強力な殺菌作用、歯根の一部のセメント質を再生する作用があるので、再発率が劇的に低下しました。
  • ② 健全な骨を削り過ぎずに、最小限の手術が可能です。
  • ③ 歯ぐきの縫合の際に、かなり小さな針と糸を使うことができるので、傷跡がきれいに治ります。

レジン修復治療

レジン修復とはプラスチックに近い樹脂をむし歯を削った穴へ詰める治療です。

プラスチックと違って最初はペースト状に柔らかく、形を元に近い状態に整えてから特殊な光で固めます(光重合レジン)。 肉眼と手指で詰めるので、当然穴からはみ出したり境界がギザギザになってしまいますので、最後は磨き(研磨)を行います。

しかし、残念ながら肉眼治療では各治療段階で以下のような「誤差」が生じます。

レジン充填処置の各段階 人間の肉眼の限界による治療誤差
むし歯を削るとき
  • ・見えないむし歯を取り残す。
  • ・健全な歯質を削り過ぎる。
  • ・神経(歯髄)の上部がわずかに露出していても気付かないことがある
  • ・歯ぐきが傷つきやすい。
レジンペーストを詰めるとき
  • ・数ミクロンの気泡が入っていても気付かない。気泡が残るとむし歯になったり、レジンが割れやすくなる。
  • ・歯ぐきが傷ついて出血すると、レジンが黒く変色したり固まりにくくなる。
研磨のとき
  • ・はみ出ているレジンを取り残し、段差を残してしまうので、再度むし歯になりやすくなる。
  • ・レジンの周りの健全な歯質まで過剰に磨いてしまう
  • ・歯ぐきが傷つきやすい


 マイクロスコープを使ってレジン充填処置を行うと、上記のような「誤差」は極めて小さくなるメリットがあります

旧来の「誤差」のために再治療を繰り返して、徐々に歯質が減ってしまうということが減るので、神経を取る(抜髄する)可能性も減り、長い目で見ると歯の寿命自体も延びます。

 もちろん、型を取って詰め物を入れるインレー・被せ物(冠)を入れる治療、歯石・着色除去などの歯周病治療、その他ほとんどすべての歯科治療において、肉眼でおこなう従来の歯科治療よりも顕微鏡治療のほうが、高い精度・より正確な治療により再治療を減らすことが可能になります