当院の3つのこだわり
1.口腔3D診断
最当院では通常の二次元レントゲンを低被曝デジタル化しているだけでなく、さらに一般CTとは異なるマイクロCT(コーンビームCT)を導入しております。
マイクロCTは歯科や耳鼻科などの非常に小さく複雑な範囲に特化されているために、むしろ総合病院で導入している施設はほとんどないのが現状です。
一般CTに比べて以下の特徴があります。
- 範囲が限られており、低被曝量(一般CTの5分の1以下)
- 微小で複雑な口腔や歯を立体的で高精度に3D分析・診断できる
- 金属アーチファクト(画像の乱れ)が少ない
- 短時間で撮影できる
この機器のおかげで、今までの一方向からしか見ることができない平面レントゲンでは決してわからなかった下記の様々な診断の精度が飛躍的に向上しました。
- 不定な歯牙の痛みの原因
- 歯根の膿の位置や拡がり
- 親知らずと神経や副鼻腔との位置関係
- 埋まっている歯の立体的位置
- インプラント埋入方向
- 顎関節の変形や変位
- 歯列矯正前の診断 等
また当院では、できるだけ多くの患者さんの病状を正しく精密に診断するために、撮影料金を実勢価格の1/2~1/3程度まで低価格でご提供させていただいております。
詳しくは「治療の精度・安全性を高めるための取り組み」をご覧ください。
マイクロCT(コーンビームCT)
撮影図
2.デジタルツールカウンセリング
歯科・口腔の治療は身近でありながら実は非常に複雑で多岐に渡っており、案外治療方法を正しく理解されている方は少ないのが実情です。
ご自分では見えない部分の治療だけに、具体的なイメージを抱きにくいのではないでしょうか?
当院では、できるだけ歯科治療や口腔外科手術の内容を患者さんが納得されるまでご説明するよう心がけて、模型・写真・イラスト・見本等を用いております。
さらにビジュアルにご理解いただくためにアニメーションを使用して、患者さんのレントゲン写真や口腔内写真等を取り込んでのデジタルツールカウンセリングも行っております。
デジタルツールの画像例(1)
デジタルツールの画像例(2)
3.院内感染予防
歯科医院をめぐる不名誉な噂とは?
ウイルス性の肝炎などの感染症患者さんの中に、時折次のようなことをおっしゃる方がいます。
『昔の歯医者さんで病気をうつされたに違いない。』と。それは本当なのでしょうか?
歯科の名誉のために述べますと、日本でウイルス性肝炎が拡大した原因のひとつに、
昭和40年代以前に集団予防接種の『廻し打ち』があったことが現在になって言われています。
しかし、確かに歯科医院は他の科に比べても圧倒的に一人の医師が数多くの患者さんの唾液や血液に触れます。また、私が歯科医師になるために学生時代の終盤に大学病院の臨床見学実習に始めて参加したとき、後で述べる『応急処置』や『問題な行為』の多くを目の当たりにし、不安を感じた経験があります。
患者さんが同じように考えても不思議はないことでしょう。
私どものクリニックでは、治療はもとより衛生面においても
『医師である自分自身が治療を受けてもいいと思える、安心なレベル』
を目指すことを大きな目標といたしました。
感染予防の具体例
1.機器の滅菌・消毒の徹底
これはいまさら言うまでもない当然の行為ですが、完璧に行うことは実はかなり困難な点もあるのが実情です。
【小型器具の滅菌】
一般的にオートクレーブと呼ばれる高圧・高熱の器械に入れ滅菌します。ところが、これには熱に弱いプラスチックやゴム、ビニル製品は滅菌できません。ウイルスや強い細菌には無効の薬液で拭くだけでは不十分です。
当院では 時間とコストのかかるガス滅菌器で滅菌するか、もしくはディスポーザブル(使い捨て)の器材を使用しています 。
応急処置 オートクレーブで滅菌できない器具を、 |
当院の処置 ガス滅菌で完全に滅菌する |
【大型器械の先端部】
ほとんどの人が苦手な、あの歯を削る器械。タービンや電気エンジンという器械です。
これらの器械は直接歯を削り、唾液や血液にさらされ器械の中にも浸入します。逆流防止弁が付いているものもありますが、これだけでは完璧ではありません。
もちろん 先端部(ハンドピース) が着脱式になっているので滅菌することが可能です。しかし頻繁に使用する器械ですので、かなりたくさんのハンドピースを用意しないと滅菌が間に合いません。
ハンドピースは数万~数十万円する高価な器械ですので、現実的にはハンドピースをはずさずに薬液で拭くだけで済ませ、複数の患者さんに使いまわしていることもあるようです。
当院ではハンドピースを数十本揃えておりますので、一人の患者さんに使用したら、その都度先端部を滅菌することが可能なのです。
応急処置 使用したタービンの先端を薬液で表面だけを拭く |
当院の処置 滅菌したタービンを滅菌袋から取り出す |
当院の処置 使用したハンドピースの先端をはずし、毎回滅菌する |
|
当院の処置 当院の多数のハンドピース |
大型器械には先端がはずせないものもあります。
前歯などの虫歯の穴に詰めるレジンといわれる白い樹脂は最初は軟らかい素材で、「光重合」といわれる方法で硬化させます。この光を発する重合器はお口のなかに直接入れるのですが、先端をはずすことができません。
このような器械の先端には ディスポーザブル(使い捨て)のカバーを装着し、使用後はカバーを廃棄します。
応急処置 器械の先端を直接口の中にいれて、使用後は先端を薬液で拭くだけ |
当院の処置 器械の先端にディスポーザブルのカバーを装着して、使用後廃棄 |
2.治療処置の感染予防
【小さな危険に対する小さな努力】
実は、日々医師や衛生士が普通に行う 一般治療行為の中に、小さな危険 がたくさんひそんでいます。数多くの患者さんの中に感染症をもつことを常に疑う概念を持たなければなりません。
通常の細菌感染予防に加え、 「患者さんから患者さんへ」の交差感染を防ぐためには、小さな注意が必要なのです。
問題な行為 | 当院での行為 |
---|---|
細菌の多い口の中を、消毒もせず、いきなり麻酔の注射を打つ |
麻酔の注射を打つ部位には消毒します |
口の中を触った手で、引き出しの中やカルテを触り、別の患者さんの治療の際に再び同じ場所を触る |
・口の中にいったん触れたら、引き出しやカルテなどの消毒できない場所には触れない |
ディスポーザブル(使い捨て)のはずの手袋を捨てずに、簡単に洗って複数の患者さんに使い回す |
一度口の中に触れた手袋は、その都度使い捨てにしている |
口の中に入れたトレーに型を取るための接着剤を塗布するときに、接着剤のフタに付いているブラシ1本だけで複数の患者さんに使い回す |
いったん口の中に入れたトレーに、型を取るため接着剤を塗布するときは、個別のスポンジを使ってその都度使い捨てる |
詰め物に使う材料(レジン)を取り出すときに、すでに口の中で使った器具で直接医師が取り出す |
材料を取り出す器具は、口の中で使用していない別の器具でアシスタントに取り出してもらう |
歯の中に入れる薬をすでに使用済みの器具で、共通の薬液ビンに直接つける |
歯の中に入れる薬液は、個別の小皿に分け出したものを使用し、余った薬液は廃棄する |
【空気中への配慮】
歯科医師の死亡原因に、肺がんなどの肺疾患が多くを占めるのをご存知でしょうか?歯科医師は年中、口の中の細菌性物質を高速回転の切削ドリル(タービンなど)で削り、無数の切削粉を空気中に撒き散らせています。
このような環境下で長年診療に携わっていると、肺に損傷をきたすのも納得いただけることでしょう。
無論、患者さんにもご自身の歯の切削粉だけではなく、他の患者さんのそれをも、吸気するわけです。
当院では、各診療室には大容量の空気清浄機と切削粉が広く拡散しないよう口の外から吸引する口腔外バキュームを標準装備しております。
空気清浄機 |
口腔外バキューム |
3.外科手術の感染予防
【消毒法】
外科手術においては、器材の滅菌はもとより、患者さんが元々身体の中に持っている細菌を極力低下させる必要もあります。
せっかく滅菌された器材や手袋を使用しても、医師が触れる患者さんの口の中だけではなく、口の周りや衣服が不潔では意味がありません。
外科手術の際には、医師が触れる可能性のある部分(口の中および口の外周り)を消毒した上で、消毒できない部分を滅菌した布(おい布)で覆い隠します。
【滅菌水】
ところで手術中に用いる水は普通の水は適しません。日本の水道水は世界的にも誇りうる滅菌水ですが、長い水道管を通過して建物によっては貯水タンクに溜まっていた水は、飲料水としては問題なくても、外科手術に使用するのは不適切です。
歯を削る器械(タービンや電気エンジンなど)は切削時に発生する熱を冷却するために器械の先端から多量の水を放出します。通常この水は水道水しか連結できないようになっているのが普通です。 虫歯治療の際には普通の水道水で十分ですが、 外科手術の際には当院では医療用滅菌水に切り替えることができるオリジナルのシステムを導入しております 。
このシステムは当院が治療台メーカーにオーダーしたもので、このメーカーは以後同じシステムを総合病院の歯科へ導入しています。
外科手術時は、スイッチの切り替えで、
医療用滅菌水のボトルから水がでます
なぜこのようなことにこだわるのか?
院内感染には大きく分けて2種類あります。
- [1]外科手術の前後に身体内外に常在する細菌に感染してしまういわゆる術後感染 。
- [2]外科手術の有無に関わらず何らかの原因でウイルスや耐性細菌に感染した患者さんの病原が他の患者さんに感染する、いわゆる交差感染 。
[1]は手術前の消毒行為が重要なことは言うまでもありませんが、これらが問題なくても患者さ の抵抗力の違いや、術後の管理によっても感染の可能性は変化します。特に外来手術では、術後の自宅での自己管理が重要です。
[2]は患者さんにとって自己管理ではどうしようもない、医療機関サイドの管理にかかっているといえるでしょう。
感染には空気、飛沫、接触感染などがあります。
歯科の外来では日常的に同時並行しながら多数の患者さんの診療が行われます。
唾液や血液などの体液に頻繁に接触して治療する歯科医師は かなり厳密に注意した行為を行わなければなりません。でなければ歯科医師は花から花へ花粉を運ぶ蜂のごとく、 「患者さんから患者さんへ」の「感染源の媒体」となってしまい、交差感染の危険性を増やしてしまうのです。
私は歯科医師になって以来、大学病院や総合病院の歯科や口腔外科に勤務してきたのですが、こういった大きな病院の歯科だからといって、すべての歯科医師がそのような概念を持ちあわせていたとは言えませんでした。
特に多様多種類の器材を用いる歯科では、これらの 「取り扱い方」が重大 な意味を持つのです。
当院では、医療機関の当然の義務として院内感染予防のために、米国疾病管理センター(CDC)のガイドラインにあるユニバーサルプレコーションという概念を取り入れ実行しております。
ユニバーサルプレコーション
・すべての患者さんの体液・排泄物は感染の可能性のあるものとして取り扱う。
・治療・処置行為等で体液・排泄物に触れたり触れた疑いのある全ての医療器材も感染の可能性のあるものとして取り扱う。
私たちは、日常的な一般治療こそこの概念を重要視し、先に述べた具体的な努力を行っているのです。