第三回 二つの歯周炎

歯周病って何?

歯肉と歯の境い目にプラークや歯石といったお口の中の細菌がたまることによって起こる病気です。

ブラッシング時の出血や口臭、歯肉が赤いなどがわかりやすい症状なのですが、大きく腫れたりうずくような痛みを伴わないことも多いために知らず知らずのうちに進行してしまいます。

慢性的な炎症による腫れは次第に歯を支える歯槽骨にまで影響し、歯槽骨が溶けて歯を維持することが出来なくなり、重症になると歯は脱落してしまいます。

一般的に歯周病とか、昔は歯槽膿漏(しそうのうろう)と言われてきました。後で紹介する、歯根から感染する根尖性歯周炎と区別するために、歯の周辺の組織(歯周組織)から感染するので、辺縁性歯周炎とも言われています。

歯周病は慢性的な病気で一度罹患すると完治する疾患ではありませんが、歯科医院での専門的なケアと併せてそれぞれのお口の状況に合った正しいブラッシングにより改善・維持を図ることが出来ます。

歯周病を治すには?

レントゲン検査や歯周ポケットの測定検査により、弱っているところを歯科医師や歯科衛生士が確認し、一人ひとりのお口の状態に合ったブラッシング指導や歯石除去を行います。

専門的なケアを行なうことにより口腔内を清潔にし、歯肉の腫れや口腔内の衛生度を一旦は改善することができます。

さらに、必要に応じては専門的な歯周ポケット内の掻爬やGTR法(部分的に失った歯槽骨を回復させる再生治療)などの外科処置を行なうこともあります。

(※但し、歯周病の病態によっては適応にならない場合もあります。)残念ながらどうしても残すことができない場合には抜歯になることもあります。

しかし、一通りの歯周治療が終わっても、毎日のブラッシングを怠れば、あっという間に後戻りしてしまいます。指導を受けた自分に適したブラッシングの方法(①自分に合った歯ブラシを使う②正しく歯ブラシの持つ③正しい位置に歯ブラシを当てるetc)を続けていくことが大切です。

そうすれば、自然にきちんと磨けるようになり、歯肉はみるみる元気になっていきます。また、歯ブラシでは磨けないところは歯間ブラシ・デンタルフロス・部分磨き用の歯ブラシなどの補助器具も併用すると効果的です。

生活習慣の改善も歯周病予防の大切な方法と言えます。例えば、私たちの毎日の生活の中にある歯周病にかかりやすい要素を取り除き、食生活を改善することです。繊維質やビタミンCが豊富でバランスの良い食生活を心がけましょう

歯周病を悪化させる最大の要素の一つに喫煙があります。喫煙により血流が低下し、口腔粘膜は酸欠状態や栄養不足になり、歯周治療の治りも悪く予後もあまりよくありません。もちろん、お口の中だけでなく、体への悪影響も大きいものです。

喫煙の習慣がある方は是非禁煙をおすすめします。そして、歯周病菌に負けない身体の抵抗力をつけることも大切です。

以上のように健康的な生活習慣・食生活を送り、できれば年に2~3回の定期健診と併せてクリーニングを受けることでお口の清潔を保ち、現状維持を図り悪化予防をしましょう。

もうひとつの歯周炎って何?

ところで歯肉にニキビのような腫れを見たことはありませんか?口内炎のようにも思われがちですが、潰れたり治ったと思っても再発したりする事があります。これは歯周炎の中でも根尖性歯周炎というものです。

辺縁性歯周炎と違って、歯根の中から感染するのです。

歯肉自体の固有の病気ではなく、歯髄や歯髄の管が細菌に侵され、歯の根の先端の外側、つまり歯槽骨にまで広がった状態です。歯肉に出来るニキビのような腫れは、歯根の先端に貯まった膿が出口をもとめて歯槽骨を突き破り、外へ出てきた状態なのです。この出口をろう孔と言います。

貯まった膿に上皮が出来て袋状になると嚢胞(のうほう)という、さらに治りにくいものになることもあります。主な原因としては、

レントゲン写真で見ますと、歯根の先端部分が黒く写っています。慢性のものと急性のものとがあり、① 慢性の根尖性歯周炎ではあまり自覚症状が無いことが多く、強く咬んだりすると歯が浮いたような違和感を感じることもあります。

体調を崩すなど、抵抗力が落ちると、急激に痛んだり大きな腫れとなることがあります。

② 急性の根尖性歯周炎では、歯が浮いたような感覚がはっきりとあり、痛くて咬み合わせる事が出来ません。

歯根の先端で化膿し出口が無い場合にズキズキと痛みがします。ひどい場合には顔やリンパ節まで腫れ発熱します。

根尖性歯周炎を治すには?

根尖性歯周炎の治療は、歯髄の管の中を再清掃していくのが基本です。感染により腐った歯髄や腐敗物を取り除き、歯根の中を清掃し、繰り返し消毒をしていきます。

それでもなかなか膿の袋が小さくならなかったり症状が改善しない場合には、外科手術で歯根の先端ごと膿や嚢胞を取ったり状態によっては抜歯する事もあります。

虫歯のようにハッキリとした痛みがある頃にはかなり進行していることが多いので、多少の違和感があればすぐに受診することをお薦めいたします。

症状が全くなくても神経の処置を受けたことがある人はレントゲンで定期的な健診を受けておくのも早期発見につながることがあります。